ジェームズ・ダイソン

ジェームズ・ダイソン

ジェームズ・ダイソンは世界でただ一つ、吸引力の変わらない掃除機で有名な「ダイソン社」の創業者であり、紙パック不要のデュアルサイクロン掃除機の発明者として知られている人物です。また、車輪の代わりにボールを用いた手押し車「ボールバロー」の発明者でもあります。イギリス・イングランドのプロダクトデザイナーで、英国ではポールスミス、コンランと並び、3大デザイナーとも呼ばれている人物です。

プロフィール

1947年5月2日、イングランドのイースト・オブ・イングランドにあるノーフォークに生まれました。ロンドンのバイアムショーアートスクールに進学し、絵画を学びますが、それだけでは物足りないと考え、1968年から1970年まで英国王立美術大学(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)に入学します。同校では建築を専攻し、家具とインテリアのデザインを学びました。その後は船舶工学に興味を持つようになり、工学に転向します。大学在学中に、高速の上陸用舟艇シートラックを開発。エンジニアリングへの情熱を高めました。その後、従来の手押し車からタイヤを廃し、代わりに大きなボールを車輪代わりに使った「ボールバロー」を開発します。これは、柔らかい地面でも沈まずに容易に操縦できると好評でした。その後1970年代にサイクロン式掃除機を開発。1993年にイギリスにてダイソン社を設立しました。現在ダイソンの純益は、優に1億ポンドを越すと言われています。現在は母校である英国王立美術大学の学長を務めています。

美術作品のデザイン

掃除機の開発で知られるダイソンですが、美術品のデザインもコンスタントに行っています。2002年にジェームズ・ダイソンは、オランダの画家エッシャーのリトグラフに描かれた有名なだまし絵を現実で表現しようと高層しました。土木技師のデレク・フィリップスと共に1年間作業を経て、正方形の4辺に沿って、下から上に逆流する滝状のウォーター・スカルプチャーを創り出しました。この作品は「Wrong Garden(誤った庭)」と名付けられれ、2003年春に「チェルシー花の展覧会」に展示されました。


ダイソンと掃除機

ダイソンが掃除機を開発しようと思ったきっかけは、製材所にたまたまあった、1886年にアメリカのモースによって発明された巨大なサイクロンが、掃除機の吸引力の低下を解決できないものかと考えたことでした。ダイソンは自分の古い掃除機を解体して紙パックを取り出し、代わりに試作品のサイクロンを搭載するなどして試作を重ね、1983年にはGフォース型のサイクロン掃除機の試作品を、2000台から5000台は製作したと言われています。問題解決のために、5年の歳月を経て。サイクロンテクノロジーを搭載した紙パックのいらない掃除機が出来上がったのです。英国内においてダイソンのアイデアに基づく製品の製造流通を行おうという業者がいなかったため、ダイソンは日本において、明るいピンク色のGフォース型サイクロン掃除機を、カタログ販売によって2000ポンド相当で発売を開始しました。1986年には、米国で特許を取得しています。しかし、この発明は、主要なメーカーには全く相手にされませんでした。そこでダイソンは自社の製造工場を持つことに決めました。

テレビコマーシャルの力

ダイソン社の英国市場における突破口は、テレビコマーシャルにおいて、他社と違って紙パックの買い替えが不要であることを訴え続けたことでした。当時イギリス市場で使い捨ての紙パックは、1億ポンド相当が出回っていました。ダイソン社は「紙パックよ、さようなら」というスローガンで、顧客の心を掴んだのです。それまでのダイソン社のテクノロジーがもたらした吸引力が低下しないというコマーシャルよりも、紙パックがいらないということの方が、顧客にはずっと魅力的に響いたのでした。

なぜダイソンは売れたのか

最初の家庭用真空掃除機は、布袋などのフィルターでゴミを濾す方式から始まりました。しかしゴミ捨ては憂鬱な作業で、手が汚れるだけでなく、布袋から大量のホコリが舞うという不潔な作業となっていました。ところが紙パック式掃除機が発明されるやいなや、ゴミ捨ては格段に清潔な作業となり、ゴミの溜まった紙パックを捨てるだけで済むようになりました。このため、紙パック式は急速に普及したのですが、安価な紙パックでも捨てるのが惜しいという、庶民の心理的な要因を産み出すことにも繋がりました。紙パック不要を掲げたダイソン社の掃除機が、比較的高価であったのにも関わらず庶民に受け入れられたのは、このような心理的要因があったためであることは言うまでもないでしょう。こういったダイソンの開発秘話やマーケティング戦略は、起業するうえで大変参考になると思います。事実、ダイソン社の成功にえいきょうされて、他の主要なメーカーも、紙パックが不要な真空掃除機を再び売り出すようになりました。しかし、このような先祖返りともいえる掃除機は、ダイソンの掃除機も含めて昔ほどではないにせよゴミ捨て時には多少のホコリが舞い、定期的なフィルターのメンテナンスが必要になり、かつ、一般に紙パック式掃除機よりも高価になったことは皮肉と言えるでしょう。なお、ダイソンはフーヴァーUKを特許侵害によって告訴し、約500万ドルの賠償金を獲得しています。